鉄と鍛造。
私たちが普段触れる素材としての鉄の歴史や、
鍛造の技術を紹介します。
鉄の歴史
鉄は古代から道具や武器として使われることが多く、鉄による装飾的なものづくりは、紀元前300年頃エジプト王朝で使われたベッドが最初だと言われています。
大陸から日本に伝来した時期は、縄文時代とも弥生時代とも言われていますが、古墳時代中期(5世紀初め)には、鉄の原料を溶かして塊を作る精錬炉が整備された鍛冶工房が、東国の内陸部まで波及していたようです。
6世紀には鉄製品が刀剣や甲冑と言った祭祀用品を製作するようになりましたが、まだまだ鉄の量産が出来ずとても貴重な物でした。
7世紀〜10世紀の律令制度の頃になると、鍛治工房は地方の官営に付属することが多く、建物の建造時に釘や鎹(かすがい)などの建築資材が製作されるようになってきます。
11世紀以降は、農機具にも鉄が普及してきたため、鍛冶工房は必要とされる時期に集落を訪れて鍛冶を行うようになりました。その後、戦国時代になると城下町が形成されるに従って鍛冶職人も城下町に定住するようになったと言われています。
ロートアイアン
日本語で言うと「鍛造」。
一定の温度に達すると溶けだす温度を融点と言いますが、鉄の場合723度から軟化が始まり1530度が融点です。
そのため700度から1200度までの広い範囲でハンマーなどを使い様々な形に変化させることが出来ます。またハンマーなどで打ち鍛えることで素材自体も強靭さが増すのも特徴と言えます。
素材自体が強くなるため、現代ではベアリングなどの部品も鍛造で作られているものが多いです。
ここでは装飾的な鍛造技術を紹介してみましょう。
「叩く」
熱した鉄をハンマーなどで叩くことで先を細く延ばしたり角を取ったりできます。また叩くことで鉄の表面に鎚目(ハンマートーン)が付き、豊かな表情が生まれます。
「曲げる」
熱した鉄を型に当てて巻き込んでいけば渦巻き状の形になり、型を変えることで様々な曲線が作れます。
「ねじる」
角棒を部分的に熱してからひねると、そこだけねじり模様にすることが出来ます。角棒の他にも多角形などを用いたりねじる間隔を変えたりするとまた違った雰囲気が出てきます。
「接合する」
古来から鉄の接合する技術はあり、熱して軟らかくした鉄同士を叩いて接合する方法でした。しかしこの方法は技術的に難しく、現在は工業機械を使って鉄同士を接合する溶接が主流です。他にも切断したり削ったりしながら完成させます。
鉄の質感
本物の素材には人の心を動かす力が秘められていると言われています。
鉄はもともと硬くて冷たい無機質な雰囲気を持っていますが、手作りによるロートアイアンはハンマーで叩いたり型で曲げたりすることで、暖かみのある鉄へと表現することが可能です。工業製品のように画一的に見えるものよりも、人の手によって叩かれたひとつひとつの繊細な表情が、鉄の質感をいっそう豊かなものにしています。
今までは天然素材である木材の質感に対して、鉄もまた同じく天然素材でありながらあまり調和が取れていなかったように思えます。
これからは鉄も質感を出し木材や石、ガラスと言ったような天然素材と調和していかなければならないと思います。