物言わぬ道具たち。

道具を見つめる。

鍛く、熱する、斬る、削る、曲げる。
工房にある道具の日常。

「炉」

「鉄は熱いうちに打て」と言います。
刀鍛冶は木炭を使用しますが、我々は鉄をコークスで熱します。
「コークス」とは、石炭を蒸し焼きにし炭素部分だけを残した燃料のことで、炭の様に自然体では燃えません。ブロアー(送風機)を使用して強制的に空気を送り込み燃焼させるのです。
鉄の加工温度は、大体900度前後位の状態を我々はよく使います。色で見分けると黄色っぽい色をしており、写真の様な白っぽい色は約1100度前後になっています。

「手槌」

一般的には「ハンマー」と呼ばれる道具。
手仕事の意味合いを強く持つ鍛冶屋では『手槌』と呼び、職人それぞれに思い入れの強い道具です。
柄の長さや木の素材、頭部の大きさや重さなど、自分にあった調節をし、様々な用途に合わせた使い方をします。
まさに自分の手の一部の様な、欠かせない「相棒」でもあります。

「金床(かなどこ)」

この道具の歴史は古く、青銅器時代には既に金属の加工のために使用されていました。そのため鍛冶や技術のシンボルになることがある道具です。
主に鉄を鍛く作業台として用い、平面部は直線を出す定規の役割があり、角(つの)もしくは鳥口と呼ばれる尖った部分は曲線部の加工を行います。

「矢床(やっとこ)」

鍛造過程で、火の中で加熱(焼き入れ)している対象物をつかむ時に使用します。
熱した材料をつかむ「手の延長」となる大事な道具で、「火挟み」「ハシ」とも呼ばれます。

「治具(じぐ)」

鍛造において「叩く」と同様に重要なのが「曲げる」ことです。
この治具を用いて鉄を思いのままに曲げたり、また曲がっているものをまっすぐにしたりと、まさに鉄を理想の形に治めるための道具です。

「収納棚」

ネジやワッシャー、その他の小物金具を収納した棚。
親子3代に渡って使い続けてきたこの収納棚が、工房の片隅でいつも作業を見守っています。

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